こつこつ、こつ。
ほうら来た。
C調言葉にご用心
「テイラーさん、黎明新報の最新号ありますか」
「未だですよう。つい先日も来たばかりじゃあないですかさん。
これから個別取材を敢行するんです」
「こべつ、しゅざい」
「インタビューですよ」
くすり、と嗤ってを見れば、案の定、少し怒った顔をした。
「言葉の意味くらい知っています」
むくれていても畏怖感を微塵も感じないのは、普段からその言動が愛嬌を帯びている所為だろうか。
「いや、これは申し訳ありやせん。決してさんを蔑んでるわけでは」
「うん。知ってます。テイラーさんてそういうとこ律義ですよね」
ふわりとは笑う。
ああ、見抜かれていたかな。
「でも珍しいですね。個別取材なんて」
薦めたソファに腰掛け乍らは尋ねた。
「王子殿下がお仲間を山と連れて来ていますからね。色んな方のお話が聞けるかと思いやして」
「ああ成る程。
―――あ、それなら私もその一人ですか」
自身を指差しては目を見開いた。
「そうですねい。ではさんから取材させていただきやしょうか」
隣に座って体ごとに向ける。
あらためて視ると少し小柄だなどと思った。
「わあ、嬉しい!私テイラーさんの新聞好きなんです。是非とも記事にしていただきたいですね」
少し、驚いた。
うら若い少女が、いや、うら若い少女でも、自分の新聞を喜んで読んでくれているのか。
無性に嬉しくなった。
「こんな記事なら、売れるかもしれねえですぜ」
云うが早いか、の腰を捕まえて、
ぐい、と引き寄せた。
「う、わ」
近付いたの顎に空いている手を添え、くい、と持ち上げれば。
瞳には僅かに狼狽の色が見てとれた。
「どうです。なんなら号外にしやしょうか」
「―――怒りますよ」
「構いません」
「―――勝手に、してください」
「では」
既に羞恥で朱に染まったの顔を見て満足気に嗤い
―――口付けた。
(ああ、これは良い記事になりそうだ)
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初めて書いた幻水夢がテイラーって。
サブキャラのおっさんたちが好きです。バシュタンとかムラードさんとかもう…!
テイラーは京極堂と相通ずるところがあると思います。絶対策士だ。
2007.3.12