嗤ってビスクドール!









「これ、僕の」









そう無機質に言い放った奴の顔は、相も変わらず美しかった。


(勿論私には及ばないが)


僕の、と静かに所有物宣言されたものは、綾部くん、わたしは物じゃあないんだけどな と控え目に自己主張した。
確か小松田もそうやって何かを諭されていたな。事務経験から云えば、彼の方が先輩の筈なのに。




「ねえ、聞いてるの、平」





鋭い視線が突き刺さる。新人事務員の胸に顔を擦り寄せ乍ら、色素の薄い瞳が私を視ていた。
ああ凄い。睫毛まで灰色じゃないか。





べちん。





小気味よい音。綾部になぐられたのか。
駄目じゃない綾部くんお友達に手をあげちゃ と、鈍感な彼女はなにもかも意味不明のまま。



(いっそ、それが一番の得策なのかもしれない)







「とにかく、これ僕のだから。近付かないでよね」





成る程要はさっきまで私と彼女が会話していたのが許せないのか。どこまで嫉妬深いのだろう。



(というかお前、忍者の三禁はどうしたんだ!)





無表情なままもう一度へばり付いてきた忍たまを、さも当然のように受け入れ乍ら
じゃあね滝夜叉丸くん と新人事務員は笑顔で私に別れを告げた。







「想い人を前にして嗤いもしないとは、私はお前が解らんよ」












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上級生は、皆好きです。
滝夜叉丸視点なのはあれです。趣味です。あいつ絶対純情だ。
因みに彼は綾部が事務員さんにお熱なこと知ってます。

2007.6.24